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12. インド仏教の消滅

 

 密教化した仏教は、ヒンドゥー教と明確には区別がつかないものとなり、ヒンドゥー教に融合していった。

 

 これに拍車をかけたのが、中世インドにおける都市の衰退である。僧院は、都市の住民である商人階級の寄進に依存していた。都市の衰退によって、仏教は経済的基盤を失った。僧達は、維持が困難になった僧院を捨て、別の僧院に移った。その一方で、ヒンドゥー教のバクティ運動は、仏教の衰退と並行して盛んになっていった。僧に去られた仏教徒たちは、多くがヒンドゥー教に吸収されていった。

 

 さらに、インド仏教の消滅を決定的にしたのは、11世紀ころから始まるイスラム教のインド伝播である。イスラムの侵入にともない、多くの僧がネパール、チベットに逃れた。象徴的な事件は、1203年におこった。この年、インド仏教最後の砦となったヴィクラマシラー僧院がイスラム軍によって破壊された。僧は国外に逃れ、信者はヒンドゥー教やイスラム教に吸収された。そして、13世紀、インドにおいて仏教はほぼ消滅した。1)

 

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 1) 山崎元一『古代インドの文明と社会』中央公論社、1997年、p.311以下参照。

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