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第1節 最古層の経典の思想

 

 1. 苦しみから安らぎへ

 

 世の中には自分の思い通りにならないことが多い。苦しみに満ちている。ブッダは、この世の苦しみから脱することを望み、悟りを得て、解脱した。この自らの体験をもとに、苦しみから安らぎへいたる道を人々に示すこと、これがブッダの目指したことであった。

 

 「伝承によるのではなくて、いま目の当たり体験されるこの理法を、わたしはそなたに説き明かすであろう。」(Sn.1053. cf. 921、1057、1066.)

 

 ブッダは、体系的な理論を説いたわけではない。説く相手に応じて説き方を変えたといわれる(仏の対機説法)。最古層の経典には、その特徴がよく現れている。そこには新しい層にみられるような整備された教理は見出されない。

 

 「私には、自分はこれこれのことを説くということがない」(Sn.837)

 

 ブッダは理論よりも実践を重んじた。しかし、その教えには一貫した思想傾向が認められる。

 

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